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■デジタルと言う念仏 |
東2局、バビィは「デジタル…デジタル…」と念仏のように唱えながら、棒のようにテンパイして即リーチをかけます。 |
このときドラはですから、この手牌はドラもなければタンヤオでもなく、もつかない完璧なリーチのみです。 しかしバビィは次巡にを一発でツモって、裏ドラがで見事に即席マンガンとなりました。棒テン即リー大成功です。 どうやら、この対局にバビィはっデジタルに打つという対策を立ててきたらしいのです。 一般にデジタルな麻雀とは、ツキを考えない打ち方を意味します。自分や相手のツキの状態など考えず、目の前にある情報だけで打牌を選んでいくことなのです。 ここでいう目の前の情報とは、各自の持ち点まで含みますし、また相手の癖を利用することだってデジタル打法とは矛盾しないでしょう。 しかし、バビィはデジタルとはただ単純に手役を狙わないことだと考えているようでした。 この局以降も「デジタル…デジタル…」と唱えながら、高い役を狙う本来の打ち筋と棒テン即リー的なデジタル打法(?)をミックスした二重人格的な麻雀をめざしていきます。 東3局2本場、バビィはまたしても「デジタル…デジタル…」と唱えながら、二匹目のドジョウを狙って、7巡目にこんなリーチをかけました。 |
ドラはですから、ドラもなければ三暗刻もつかず、もつかない完全無欠なリーチのみです。アンコがふたつあって点パネしている点が、前回よりマシといえるかもしれません。 9巡目、バーサス氏がバビィの現物であるを切ると、それまで静かだったロックV氏が「ロン」。ピンフ・イーぺーコー・ドラ2で親マンです。なんとバビィのリーチは、当たり牌を引き出してしまう結果となったのです。 この結末は、プロとアマの立場が逆になったようですね。プロといえば、強引に力で押してくるアマチュアを、技でかわしていくイメージがあるじゃないですか。でも、しょうがないのです。見てくれよりも結果ですから。勝ってこそプロだと考えて、そのためにはデジタルに打つべしと、対策を立ててきたのですから。 続く東3局3本場、バビィがこんなバラバラ手牌からを切ると、まだ4巡目だというのに唯我独損氏が「ロン」。 |
唯我独損氏の手牌はのみで1600点です。こうしてバビィはチクチクと点数を減らされていきます。 |
■イワシはタイに育つのか? |
バビィのテクニックが存分に発揮されたのが南2局です。 パッと見には地味な局ですが、まさに名人の一局だったと思うのです。 この局、バビィの配牌はこうでした。 |
ドラ |
明らかなクズ配牌です。 救いといえばドラが一枚あることくらい。 こういった配牌から、字牌は切らずに、ホンイツ気味に手牌を進めていくのがバビィの流儀です。 ドラ絡みの部分だけ残して、バビィは手牌をホンイツ系に変貌させます。 7巡目、手牌はこうなっていました。 |
ドラ |
それから2巡後、その間に切られたをポンすることもなく、手牌はまとまりを見せ始めています。 |
ドラ |
そして運命ともいえる10巡目のツモはドラの。 このときバビィは「ここで方針を決めなきゃいかんよなあ」とつぶやきつつ、アンコの切り。 すると、おおっ、ホンイツ系だった手牌がチートイドラ2の1シャンテンになっているじゃないですか。 まるで魔術のようです。 |
ドラ |
配牌からこの形にいたるまで、びっくりするような打牌があったわけではありません。 しかし、それは「名人に名手なし」ということでしょう。 奇抜な名手がないため目につきにくいのですが、名人はすぐれた方針によって淡々と手作りしていくというわけです。 たとえば、この手牌は9巡目にをトイツにしない限りこの形になりませんが、このを重ねられるものでしょうか? この手牌の1巡目から10巡目までのツモを並べてみます。 |
どうでしょう。 こうして見ると、やを活かせない限り、いいツモにはならないですよね。 もちろん、ツモは偶然の結果にすぎませんが、しかしその結果を呼び込むのがフォームなのでしょう。 中国の麻雀格言に「毎局アガろうとする者は負ける」というものがありますが、バビィの安定したフォームがクズ手を好手に変身させたのです。 さて、この局は、まず親のバーサス氏が13巡目にリーチをかけてきました。 |
バーサス氏がテンパイしたのは前巡の12巡目でしたが、ペンという待ちに不満があったのか、即リーチしませんでした。 しかしをロックV氏にチーされて、もう待ちを組み替える余裕はないと思ったのでしょう。親でもあり、リーチして押さえつけることにしたわけです。 |
同巡にをツモって、バビィもチートイドラ2でテンパイ。 当然のように追いかけリーチをかけます。 |
ドラ |
タンキ待ちのが、これまた絶好の待ちになっていました。このときはバーサス氏に一枚使われているだけで、ヤマに2枚残っています。そして残る二人の手牌もを使う形になっていません。 このときバビィは、なぜこの牌を選んだのでしょう。場を見る限り、このがいい待ちだと読み取れるようには思えないのです。 おそらく成り行きで手牌に残ったのでしょうが、もしもこれが絶好の待ちであることまで読み取っていたなら、バビィは空恐ろしい雀力を持っていることになりそうです。 しかし、どんなにいいエサをやっても、やはりイワシはタイに育たないのでしょうか。 バビィのテクニックも空しく、この局を制したのはロックV氏のクイタンでした。 |
ツモ |
それも腹ボテシャンポンというイモ臭い(失礼!)待ちですから、リーチが空振りした者にダメージを与えるにも十分でした。 一回のツモすら回ってこなかったバビィはガックリと肩を落とし、次局からまた「デジタル…デジタル…」と唱えることになるのです。 ●牌図2 |
■革命をめざす下位者たち |
南2局を制してトップをほぼ手中にしたロックV氏は、次の南3局には唯我独損氏に見え見えのマンガンを振り込みます。これで唯我独損氏がバビィをかわして2着に浮上しました。 「そうかいそうかい、俺のことを3着にしようってんだな」 そういじけながらも、次局、バビィはまたもや見事な手作りを見せるのです。 南4局、バーサス氏からリーチが入ったのは4巡目のことでした。それも字牌と端牌しか切っていない捨牌です。安全牌を切りたくとも、対応しようがありません。 じつはバビィにとって、こういったリーチは逆にチャンスとなります。 2着の唯我独損氏は振り込んだら3着に転落してしまいそうですし、またトップのロックV氏も気分として振り込みたくないでしょう。 それにくらべて、バビィは振り込んでもマンガンまでなら順位変動なし。 そうなると卓上にいるのはリーチ者と自分の二人だけになりやすいのです。 すなわち「微差で競っている二人にとって、他からリーチが入ることは下位者に有利」という戦略的なセオリーが成り立ちます。 リーチが入ったときのバビィの手牌はまだこんな状態でした。 |
ドラ |
こんな100メガシャンテンから、バビィは脱兎のごとく不要牌を切り飛ばしていきます。 そして8巡目になると、手牌はこんな整った1シャンテンに変貌していました。 |
ドラ |
そして、9巡目のツモはでした。このツモこそ、その打ち手が上級者なのかどうか試す踏絵でしょう。 下の牌図を見て考えていただきたいところです。 他人からリーチをかけられており、はその現物。そんな状態で、このを手牌に残せるかどうか――。 ●牌図3 |
牌図3
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