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■雀賢荘三銃士の憂鬱

 この日、斉藤プロを迎え撃ったのは、チェリオ氏、ハゲタカ氏、唯我独損氏の3名で した。ハゲタカ氏と唯我独損氏は、最近の大会では毎回のように二人で優勝を争うとい う驚異的な実績を誇っています。この二人は雀賢荘の2大エースと呼びうる存在だと思 います。またチェリオ氏とは1回だけ対戦したことがありますが、東場に沈んでもあわてず騒がず、南場に入ってからマンガン、ハネマンとアガってトップを取っていました 。本当にほれぼれするような麻雀でした。

 そんなメンツに恵まれて好勝負が期待できましたが、わずか半荘2回ですから、そん なことは始まってみなければわからないことでした。そして実際に期待を裏切らない好勝負となったのですが、その展開は予想とは違ったものとなりました。

 東1局。親はハゲタカ氏。この局に氏の下した決断が1回戦の展開を決めたのです。 3巡目、ハゲタカ氏の手牌はこうなっていました。

 ドラ

 ここにが出てきます。これをポンすればテンパイですが、ハゲタカ氏は鳴かなか ったのです。おそらくメンゼンテンパイによるリーチ、あるいはチャンタを狙ったので しょう。私の知るハゲタカ氏はスピード重視の打ち手でした。しかしこのときはじっく りとメンゼンで打つ方針を採ったのです。この見送りが1回戦の方向を決めました。こ れまでのプロ対戦では、鳴きによるスピード勝負の展開が続いてきましたが、今回は一転してパワー勝負となったのです。

 7巡目、斉藤プロはペン待ちでテンパイしたところで、ちょうど持っていたも う一枚のを切り出します。

 ツモ ドラ
ハゲタカ氏はこのをポンして、カン待ちテンパイ。
 ポン ドラ

 しかし一回のツモすら回ってこないまま、タンヤオに手替わりした斉藤プロにチェリ オ氏が振り込みました。タンヤオ・イーぺーコー・ドラ1の5200点です。ハゲタカ氏が 最初のをポンしていたなら3900点をアガっていたと思われますから、そのアガリが 斉藤プロに転がりこんだわけです。

 何度も書いてきましたが、雀賢荘のような不特定多数と打つ場では、何よりもテンパイスピードが重要です。けれども麻雀プロの世界では、破壊力の比重が高くなっています。これまでに登場したプロたちはその落差に苦しみました。

 また、もうひとつプロが苦戦してきた要素として、ネット麻雀への慣れもあると思い ます。不思議と麻雀プロはパソコンに不慣れな人ばかりで、みな雀賢荘どころかネット麻雀自体をやったことがありませんでした。しかし斉藤プロは違いました。いやそれどころか、ネット麻雀の方が得意だというのです。

斉藤「なぜかネット麻雀の方が成績いいんですよ。実際の麻雀だと情報量が多いじゃないですか。考えすぎちゃってるのかなあ?」

 これまでのプロたちが抱えていた二つのハンディから、今回、斉藤プロは開放されていました。その気楽さが好配牌につながったのでしょうか。この日、斉藤プロの配牌やツ モは明らかに恵まれていたのです。しかしそのことを聞いてみると、本人はあっさりと否定しました。

斉藤「いや、ぼくはいつもこんな感じですよ。配牌がいいのはいつものことですから( 真顔)」

 麻雀プロとは麻雀がうまい人ではなく、ツイている人たちである。こんな説を以前にも紹介しました。斉藤プロもまた自分はツイているのが当然という一派なのでした。きっと心のなかではこんなことを思っているのでしょう。

心の声「アガった人が点棒をもらうんじゃなくて、一番配牌がよかった人が点棒をもら えたらいいのに……。どっちみち勝つんだから時間の無駄じゃん!」


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