どうでしょう。なんとも無駄のない美しい捨牌ではないですか（ゴミの捨て方に も美があるのです！）。このリーチを見て、ああ、もう仕上がってるなあ……と思わず にはいられませんでした。このとき不運にもチェリオ氏の接続が切れてしまい、ダイウ チ君が本来なら切るはずもないドラので振り込み。好勝負が壊れてしまった格好で すが、この振り込みがなくとも、いずれツモアガリしていたことでしょう。斉藤プロ、早くもマンガンゲットです。

東２局、親を迎えた斉藤プロはまたしても素晴らしい配牌を得ます。

　この配牌からドラをアンコにして、11巡目にテンパイ。唯我独損氏の３フーロに応じ て12巡目にリーチをかけます。しかしこの局はリーチをかけたことによって逆にアガリを逃す結果になりました。唯我独損氏に1300点の振り込みです。

　続く東３局、斉藤プロの配牌は頂点に達しました。見てください。こんな配牌が来ていいものでしょうか？

　四暗刻の可能性は十分。ととドラがありますから、最低でもハネマンは確定 しています。配牌も実力のうちといいますが、それにしても犯罪的です。しかし斉藤プロにとって、これくらいは当たり前のようでした。

　 斉藤「ぼくが乗ってきたときっていつもこんな感じですよ。ドラアンコが斉藤流ですから。ついてこれるのは崎見さんくらいですもん（真顔）」

　前回登場した崎見プロも鬼配牌の一族だったのですね。そういえば、彼女には配牌女王 、ドラ女王、役満女王という異名があったのでした。

　この局、斉藤プロは１巡目のをスルーして、を重ねてからをポン。２巡目にテンパイしました。出てハネマン、ツモってバイマンです。不幸にもこの地雷を踏 んでしまったのは唯我独損氏で、５巡目のことでした。斉藤プロはもうダントツです。

斉藤「こうなったら好きに打てますよ。えい、フリー雀荘打法だ！」

　次局東３局には、こんな牌姿から２巡目にをチーします。

　すると魔術のようにドラがトイツになり、がアンコになり、斉藤プロは3900点を アガりました。こうなると他の三人は逆転できる気がしなかったでしょう。

　南２局の親番がすぎると、斉藤プロは「ここから鉄壁守クンに変身しま〜す」といっ て、第一打からど真ん中の牌を切り出していきます。たぶん「俺のランは終わったぜ」 というところなのでしょう。そしてオーラスは国士無双に向かい、チェリオ氏がかけた リーチに対して、安全牌は山ほどあるにもかかわらず一発でアタリ牌を切り出してマンガン。こうして２連勝を決めたのでした。

　麻雀のうまさとは引き出しをいくつ持っているかである――そんな言い方が成り立ちます。技量が上がれば上がるほど、局面に応じて多様な選択肢から戦略を選び出してい くわけです。斉藤プロは単細胞生物のような外見にもかかわらず、この日、いくつもの 引き出しを見せてくれたのでした。バカヅキという下地があったことは事実ですが…… 。