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■雀力とはツボを見抜く目!?

 対戦後、崎見プロはこういっていました。

「安全牌を切るには(メンツを)中抜きしなければならなかったし、東1局には真っ直ぐ行く主義ですから、それでを切ったんですよ〜」

 東1局にはまっすぐ手作りして、まずはツキの状態をはかるもの。アガれたらそのままガンガン押していくし、振り込みとなったら状態が悪いということで、次局から抑え目に打ってゆく。そんな姿勢の人も少なくありません。

 しかし、やはりこれは甘い振り込みでした。いかがでしょう。下の牌図の手牌から、崎見プロと同じようにを切るでしょうか?

牌図2

 この手牌は123の三色が見え、その先には純チャンまで望めるといっても、それはまだまだ先の話であり、受け入れは狭く限定されています。このときは役なしの1シャンテンにすぎず、ドラもありません。ですからリーチの一発目には現物のを切っておき、次巡はこれも通りそうなを切って様子見しながらピンフに向かう、それがこの局面での堅実なルートでした。

 そんなことは彼女だってわかっているのです。この局、崎見プロにを切らせた要因は二つあったと思います。一つは今回の勝負に気負っていたこと。彼女はネット麻雀におそらく苦手意識を持っていますから、プレッシャーを受けると同時に今度こそ勝ってやると気負っていたことでしょう。誰しも重大な勝負になると、本来よりも強気になったり、逆にビクビクしたり、そのどちらかに傾きます。心とは難しいものです。

 そして二つ目の要因は、麻雀の局面視力とでも呼ぶべきものでしょう。局面視力とは、どこまでその局面のツボが見えているかということですね。つまるところ麻雀の力とは、卓上での情報収集力に大局的判断力がかぶさったものです。意識するしないにかかわらず、麻雀は情報収集から始まります。

 雀賢荘のとある強豪は、文庫本を読みながら麻雀を打っているという話を聞いたことがあります。それでいて彼は好成績を残しています。おそらく自分のツモ番だけ手牌を見て、あとはチラッと場を見るだけでだいたいのことはわかるのでしょう。そのチラッでツボが見えるわけで、これが情報収集力の極限ではないでしょうか。

 熟練した漁師は翌日の天気をいい当てるといいますが、これは空気に含まれる水蒸気、雲の様子、海の気配などの情報から、翌日の天気という結論だけを引き出しているわけです。それは麻雀でも同じことで、雀力とはチラッでツボを見抜く力であり、ある種のパターン認識です。

 崎見プロは雀賢荘のインターフェイスに慣れていないため、自分の手牌のうち、どれが現物でどれが通りそうなのか、一瞬には判断できなかったのでしょう。ネット麻雀と生麻雀では集める情報の種類も変わってくるため、情報を拾う端末がまだうまく機能していないのですね。そのため、一発放銃を確実に避けるにはメンツを崩すしかないという間違った前提に立ってしまい、強引な打牌をして振り込む羽目になったのでした。こうして東1局のドミノ倒しで、崎見プロは神山雄一郎氏にマンガンを献上したのです。

 次局東2局には、東1局の仕掛け人・かもめのどらさん*氏が、じつにバランスのいい手作りでリーチ一発ツモ・一通・裏1という親っパネの6000オールをツモりました。かくして1回戦のトップ争いは実質2局で終了したのです。

 一発ツモ

ドラ 裏ドラ


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